都市の公開空地を快適な空間へ変えていくことが、今後の景観経済の活性化には欠かせない。デッドスペースになりがちな公開空地に、人が寛げるカフェや、シェアサイクルのステーションを設置するなど、その活用は徐々に広がりを見せつつある。
昨年8月、東京にてこの公開空地にベンチ設置するプロジェクトが一か月の期間限定で企画された。これは丸の内・大手町・京橋・外神田4会場での「TOKYO BENCH PROJECT」というもので、東京千代田区の東京の丸の内の仲通り、国際ビル、新国際ビル前に、このほど合計9台のベンチが設置。さらに大手町の読売新聞ビルの公開空地に6台のベンチが設置された。

TOKYO BENCH PROJECTで設置されベンチ
設置されたベンチは、同プロジェクトの企画主体でもある㈱グランドレベル(田中元子社長)がデザイン監修のもと、ある大手建材メーカーが昨年秋より開発した新しい屋外家具ブランドシリーズでもある。グランドレベルは〝1階づくりはまちづくり〟をモットーに掲げて活動するまちづくりの企画会社。地域に住まう人々が、まちの主役になれるような施設・空間・まちづくりを行っており、その企画の特徴は、ハードやソフトとそれらを取り持つコミュニケーションを一体でデザインすることだ。
今回のプロジェクトも都市空間における無機質な公開空地で人の賑わいを創出するというソフト面と併せて、建材メーカーの商品というハードを組み合わせた提案であった。
期間限定での設置を終えたベンチは、現在、田町駅前のビル、新田町ビルの足元に移設されている。新田町ビルでは以前よりグランドレベル監修のもと、社会実験としてベンチの設置を行ってきたこともあり、今回は恒常的な設置となった。
都市のビルを中心とした建築空間を快適化するには、このようなハードとソフトを結び付ける提案と、それを推進する企画力が問われているのではないか。ベンチというアイテムに着目したビルオーナーと、それに応えたグランドレベルの企画力に、今後の景観経済活性化のヒントが見て取れる。

田町駅前・新田町ビル